リーダーに大事なことは、「自分の常識は他人の非常識」だということを知り、「他人を変えようとするのではなく、他人への接し方を変える」ことです。
スッラの死後も、ローマ内外での戦争は続きます。
スッラの部下として育ったルクルスは優秀な指揮官でした。
12万人のポントス軍に対して、3万人の戦力で完勝。
続いてアルメニア軍12万5千人に対し、1万5千人の戦力で完勝。
このように戦いに強い常勝将軍でした。
しかし、兵士との関係は冷ややかなものでした。
ルクルス自身は、努めて兵士たちと交わり、行軍でも戦闘でも常に先頭に立ち、野営をする際には兵士たちと同じ条件で寝ました。
それでも兵士たちは不満でした。
ルクルスは、自分が耐えているのだから、兵士たちも同じように耐えるべきだと考えていました。
自分の優秀さに自信を持っていたので、細かいことは自分に任せておけば良い結果につながると考えていました。
鮮やかな勝利を収めたのだから、報酬はたくさんもらって当然だと思っていました。
戦利品の中でも美術工芸品は、兵士たちにはその価値が分からない。だから価値が分かる自分がもらった方がいいと実行しました。
現代でも、こういう人はいます。
自分の常識が他人にとっても常識であると考えて相手に接します。
しかし、相手はそんな常識は知りません。
そこからコミュニケーションギャップが生じていき、不満がたまっていきます。
最終的に、兵士たちはルクルスの言うことをきかなくなります。
一敗もせずに退却し続けるという光景は、相手からすれば奇妙なものに見えたでしょう。
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・ローマ人の物語(7)ー勝者の混迷(下)(新潮文庫) 塩野七生著