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【歴史に学ぶ第34回】その後の二人

  

 「治世の能臣、乱世の奸雄」という言葉があります。

 

 平和な時代には仕事のできる優秀な部下

  乱世ではずる賢い英雄

   

 この二つの気質を持つ人はなかなか存在しません。

  

 英雄タイプの多くは、誰かの下で上手く立ち回ることが難しいです。

  非常事態ではあれこれ動いて頼もしいですが、安定期には勝手な行動が目立ってくる。そのようなタイプの人です。

  

 ハンニバルとスピキオは時代の主役となった二人ですが、その後の人生は二人とも恵まれたものではありませんでした。

 

 典型的な英雄タイプの人が陥る失敗をしてしまいます。

  

・ハンニバル

 敗戦国カルタゴの立て直しのために、国内経済を再建しようと奮闘します。

 

 これまで増税で不足分を埋めるやり方であったカルタゴに、ハンニバルは経費の節約と使い方の見直しで再建を図りました。

  

 国民の負担を増やすことばかりを考えるのではなく、使い方を見直そうという政治家は今の世の中にも欲しい人材ですね。

  

 なかなかの効果を上げていましたが、やり方が厳しいことや周りに敵を作りやすいハンニバルの性格から反感を買い、亡命せざるを得なくなりました。

 

 ローマから危険人物として警戒されたことや、亡命先でハンニバルを使いこなせるようなトップに恵まれなかったこともあり、その後も亡命を繰り返して最後は毒を飲んで自殺します。64歳でした。

 

 

・スピキオ

 救国の英雄としてたたえられたスピキオですが、それを妬む者は数多く存在しました。それはすぐに表に出ることはありませんでしたが、スピキオが体調を崩すと一気に噴出します。 

 さまざまな疑惑をでっち上げられて、攻め立てられるようになります。

 

 ここで上手く立ち回れば良かったのですが、プライドの高いスピキオは議会でキレてしまいます。 

結局嫌になって、別荘に引きこもってしまいました

 

 スピキオはそのまま、52歳でこの世を去ります。

 

 偶然にも、ハンニバルとスピキオは同じ年に亡くなりました。

 

 

  

   

(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。

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ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫) 塩野七生著