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【歴史に学ぶ第14回】成功事例をどう見るか

   

 落ち目になった会社や人をあれこれ批判する人は多いですが、上手くいっている人を見て、これは自分達に合わないと判断するのは難しいことです。

 成功事例を学んで満足する方が多いですが、良いものを良いものと認めつつも当社には合わないと取捨選択する判断力が求められます。

 

ローマ人が視察に訪れたとき、アテネのリーダーはペリクレスという政治家でした。

 権力を活用し、政治的にも経済的にも、軍事的にも、何より文化的に憧れと尊敬を受ける「ギリシャ文明」の絶頂期を築いていました。

 

 業界で革新的な取り組みを行い成功した会社と、その会社を見事にまとめ上げて考えを実行に移していくものすごい社長を目の当たりにしたイメージです。

 誰もがすごいと思う成功事例を前に、手放しに称賛し、ほれ込む人は今も昔も多いようです。

 

 しかし、ローマの視察団は冷静でした。

 アテネも、そのライバルであったスパルタという国のやり方も取り入れませんでした。

 

 組織において、自由と秩序の両立という永遠の課題があります。

 自由が無ければ発展はありませんが、秩序が無ければその発展も維持できません

 しかし、自由と秩序は本来相反するものです。

 

 スパルタは、自由を抑圧して秩序を維持しました。

 ちなみにスパルタ教育の語源は、このスパルタから来ています。

 

 アテネは、優秀なリーダーの下で自由と秩序のバランスを保っていました。

 しかし、天才的なリーダーだからできたとも言えます。同時代の歴史家は「外観は民主制だが、内実はただ一人が支配する国」とこう記しています。

 

 スパルタ式はガチガチのトップダウン組織で業績を伸ばしているが、当社のメンバーには合わない。導入したら辞める人が続出しそう。

 アテネ式は、一見いい感じに運営されているが今の天才社長がいなくても機能するのか

 ローマはどちらの政体も模倣せず、独自の政体を模索します。

 

   

(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。

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ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) (新潮文庫) 塩野七生著