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【現場から第14回】選択肢を与えられるデメリット

 

近年の労働に対する価値観は大きく変わりました。

 かつての生活よりも仕事という価値観から、バランスを取りましょうという価値観へ、そして最近の仕事よりも生活をという価値観。

 

 どの考え方が正しいとは言いません。何を重視するかの選択肢が本人にあることは基本的には望ましいことです。仕事を頑張りたい人は頑張ればいい。生活を重視したい人は生活を第一にすればいい。

 

 問題なのは、明確な方針を持たずに選択肢を与えられてしまった人々です。

 

 私は働き方の話を聞くと、婚活市場を思い出します。

 かつて結婚は当たり前という時代がありました。年頃になると本人の価値観はお構いなく、おせっかいな親せきや職場の方が今で言うマッチングを行っていました。

 

 時代は変わり、そうしたおせっかいはタブーとされていきました。

 その結果、いかがでしょうか。おせっかいは無くても自力で結婚できる男女は結婚し、そうした煩わしさを必要としない方は安心して生活できる。

 

 一方で日本国内の婚活・恋活マッチングサービス(婚活アプリ)の市場規模が2025年に1060億円に達するそうです。

 かつてはおせっかいと疎んじていたことに、お金を払ってマッチングを受けなければならない人が増えているということです。

 

 労働でも同じような現象が起きるでしょう。

 おそらく、おせっかいは無くても自力で成長できる若者は成長し、そうした煩わしさを必要としない方は安心して生活できる。

 

 多くの人は、何となく楽な方に流れていくと思います。

 

 結婚よりも重症なのが、成長が収入に結び付くことです。

 自分で取捨選択して成長できる人間はそのままでいい。

 生活を重視するためある程度の収入を捨てる覚悟がある。あるいはどこかの段階でバランスを取れる人も上手くやれるでしょう。

 

 しかし、明確な方針を持たずに選択肢を与えられてしまった人々はどうなるのでしょうか。自分を成長させるのでもなく、なんとなく日々を楽して生きる。

 一方で外国人労働者を増やそうという動きもあります。労働市場の競争は激しくなるでしょう。日本人の経済格差はますます開くと思います。

 

 仕事に偏るもよし、生活に偏るもよし、バランスをとるもよし。長い人生の中でメリハリをつけるのもよし。

 ただし自分の中で、明確に方針をもってほしいものです。