決算書や月次試算表を見ることに慣れてきた方は、次の段階として数字を分解して見ることをお勧めします。決算書や月次試算表を見ることは人間で例えるなら健康診断のようなものです。
健康診断では気になる数値があれば、その後精密検査を行います。会社の数字を分解することは、いわば精密検査のようなものです。
分解の仕方の例
分解の仕方は様々です。例えば、お客様別に売上高を分解してみれば、どの取引先との取引が増えているのか、減っているのかが分かります。ある製造業では、取引先別の売上高を調べた結果、全体としては横ばいに見えた売上高が、実は主力取引先が減少傾向で、新規取引先の増加でそれを補っていたことが分かりました。
商品別に分解してみれば、どの商品が好調で、どの商品に課題があるのかが見えてきます。あるパン屋では食パンの売上が全体の3割を占めていると思っていましたが、実際に集計してみると2割程度でした。普段から店頭に並ぶ定番商品なので、社長の感覚より実態は少なかったのです。
分解することで打ち手のヒントになる
売上高は「客数×客単価」という公式で分解することもできます。ある小売店で売上高が前年より1割減少していました。これを分解してみると、客数は変わらないものの客単価が1割減っていたのです。客数を増やす対策を考えていましたが、来店したお客様にもっと買っていただく方策を考えるようになりました。
このように数字を分解していくと、決算書や試算表全体では見えなかった個別の良し悪しが分かってきます。人間の健康診断でも、体重が増えたといっても筋肉が増えたのか、脂肪が増えたのかでは対策が変わってきます。会社も同じで、ただ売上が増えた減っただけではなく、その内容によって打つべき手が変わってきます。
分解する際の注意点
一方、すべての数字を細かく分析していては時間がいくらあっても足りません。まずは決算書や試算表全体を見て、気になる数字を探します。気になる数字とは、社長の感覚と違うもの、大きく増減したもの、あるいは会社の方針と異なる動きをしているものなどです。
人間の健康診断でも、すべての数値を精密検査するわけではありません。気になる数値について詳しく調べていきます。会社も同じで、気になる数字を分解して調べることで、限られた時間の中で効果的な分析を行うことができます。
全体の数字は、様々な要素が集まった結果です。その中身が分からなければ、適切な対策を打つことは難しいでしょう。健康診断の結果をきっかけに生活習慣を改善するように、決算書や試算表の分析を通じて、より良い会社作りにつなげていくことが大切です。