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数字も見ないと思い込みで誤った判断をすることが


経営が思ったほど上手くいっていないと感じられる経営者は、数字で管理してみることをお勧めします。経営者の頭の中には会社の過去、現在の様々な情報が感覚として入っており、様々な課題に対して瞬時に対応できる方が多いです。

 

しかし頭の中の情報がいつしか思い込みになり、多くの経営者が思い込みによって本質的な課題を見失っているケースに出会います。

思い込みで誤った判断をしていた例


私が経験した過去の相談例でも、

 A社「お客さんの数が減少しているので店舗販売は難しい EC販売に力を入れたい」

 B社「新規ターゲットの開拓が進んでいないので、効果的な営業方法が知りたい」

 C社「チラシを定期的に配布しているが効果がないので、効果的な販促方法が知りたい」

というようなご相談がありました。

 

しかし、ひと月ほどの分析で分かったことは

A社 お客さんの数はむしろ増加 減ったのは客単価

B社 そもそも新規ターゲットへのアプローチがほとんどなされていない

C社 実は来店されるお客様は増えていたが、店側のキャパシティ不足で対応できず

 

という有様でした。

 

なぜ感覚と実態がズレるのか


このように、感覚と実態にズレが生じる理由はいくつかあります。

一つ目は、情報が古くなっているケースです。「あのお客様はよく買ってくれる」と思っていても、実際には最近は来店頻度が下がっているということはよくあります。あるいは「この商品は売れない」と思い込んでいても、それは過去の経験に基づくもので、現在の市場ニーズとは異なっているということもあります。

 

二つ目は、強烈な例外による思い込みです。とても大変だった経験や、逆に非常に上手くいった経験は記憶に強く残ります。そのため、実際には稀なケースであっても、それが普遍的なことのように感じてしまうのです。

 

三つ目は、好き嫌いの問題です。人間誰しも、好きなものについては何でも好ましく見え、嫌いなものについては何でも悪く見える傾向があります。これは経営判断においても例外ではありません。

 

 


数値を定期的に確認する


このような思い込みを防ぐためには、定期的な数値確認が欠かせません。しかし、多くの経営者から「難しそう」「面倒そう」という声を聞きます。

確かに、本格的な経営分析は専門知識が必要かもしれません。しかし、思い込みを防ぐための基本的な数値管理は、それほど難しいものではありません。

例えば、売上高であれば毎月の推移を記録するだけでも、傾向を把握することができます。お客様の数も、日々のレジ締めの際にカウントするだけで十分です。一日の売上高をお客様の数で割れば、客単価も簡単に計算できます。

 

大事なのは、こうした数値を「見える化」することです。頭の中だけで計算するのではなく、必ず紙やエクセルに記録して、グラフにするなどして視覚的に確認できるようにします。

そうすることで、「お客様が減った」と感じていても、実際には横ばいだったり、むしろ増えていたりすることが分かります。あるいは、「売上が落ちている」と思っていても、特定の商品だけが影響している場合もあります。

 

実際、先ほどご紹介した社も、本来の原因に向き合い改善を行った結果、成果を上げていますA社は接客時間を確保するための売場レイアウトや人員配置の見直し、B社は営業活動の訪問先時間配分の改善、C社はサービス提供速度の改善により、それぞれ課題を克服しました。

 

経営判断において、長年の経験から培った感覚は非常に重要です。しかし、その感覚が思い込みによって曇っていないかを確認するために、数値による裏付けは欠かせません。難しく考える必要はありません。まずは売上高、お客様の数、客単価など、基本的な数値から始めてみましょう

思い込みに気づくことができれば、そこから新しい改善の糸口が見えてくるはずです。