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国の補助金を活用して専門家を活用しよう


経営改善フェースにある経営者の方々にとって、新たな支出を抑えたいところです。しかし、改善の方向性を見出すためには、専門家の力を借りることも必要でしょう。こうした状況に対応するため、「405事業」という制度があります。こうした制度を活用し自社で作成が困難な改善計画書の策定や、改善のヒントを専門家から得ることができます。

405事業とは


405事業は業界用語のようなもので、正式には経営改善計画策定支援事業という制度です。本格的な経営改善を行う中小企業を対象とした国の支援制度で、認定経営革新等支援機関の支援を受けながら経営改善計画を作る場合に、専門家に支払う計画策定費用等の3分の2が補助されます。

金融機関から改善計画書を求められたが自社でどう作成すればいいのか、改善のヒントを得たいので経営や業界に詳しい専門家から意見を聞きたい場合に活用されることをお勧めします。 

 

手続きは専門家にお任せ


 補助制度と言うと何やらややこしい手続があって使いにくいのではないかと心配される経営者もいます。しかし、心配は無用です。

 利用申請書の作成から金融機関との調整、申請手続書類の提出先である中小企業活性化協議会とのやり取りは、認定経営革新等支援機関が主体で行います

 ただし、会社の資料を用意していただくのは会社主体で行う必要があります。また人間関係の上で金融機関へ支援をお願いするような場合は、第三者(認定経営革新等支援機関)ではなく、直接経営者がお願いした方がいいでしょう。もちろん必要に応じて、認定経営革新等支援機関としてその場に同行し、説明をサポートすることも致します。

 

 基本的には、認定経営革新等支援機関から「この資料が欲しい」、「○○銀行さんに伝えてください」というような依頼をこなしていただければ、手続は進みますのでご安心ください。 

 


405事業活用のポイント


この制度を活用する際のポイントを、順を追ってお話ししましょう。

 

・認定支援機関の選定

公認会計士や税理士、中小企業診断士等、様々な専門家が認定支援機関として活動していますが、目的に応じて選ぶことが大事です。

 

 目的①:改善計画書を策定することが主目的の場合

金融機関から改善計画の提出を求められ、とにかく計画書を作ることが目的であれば、公認会計士、税理士、中小企業診断士のいずれでも大丈夫です。やるべき改善策が既に定まっており、それを数値に落とし込むだけであれば会計の専門家だけで対応できます。ただ、改善策にこだわる金融機関の支店長や担当者からは不評なことがあるため、中小企業診断士を選ぶ方が無難だと思います。

これはどちらが上というよりも役割の違いです。大規模な経営改善計画作成になると以下のような役割分けをすることが多いです。

 

事業の分析、改善策の立案、損益計画の策定:中小企業診断士

財務諸表の分析、損益計画にもとづく貸借計画と資金繰り計画の策定:会計士・税理士

 

2人も3人も先生に来てもらう予算が無い場合の最適な選択肢は、「会計にも詳しい中小企業診断士」です。これなら事業面の作成と数値計画、両方の質が保たれます。

ただ、中小企業診断士はもともと会計のプロではないので、とんでもない数値計画を作る方もいます。そのため、改善計画の作成実績が少なく会計や金融機関系の経歴が無い中小企業診断士よりは会計士・税理士の方が安全でしょう。

 

 目的②:改善のヒントを得たい、その後のサポートも期待することが主目的の場合

改善に向けたヒントが欲しい、計画策定後も二人三脚で支援して欲しいという場合は、中小企業診断士等の経営コンサルタントを選ぶ方が良いでしょう。事業に対する提案や、改善実行のサポートを得やすいです。

 

・メインの金融機関への相談は密に

 これは依頼を受けた専門家から指示があると思いますが、大事なことなのでお伝えしておきます。

405事業は金融支援を伴う経営改善を目的としているため、主要金融機関の理解が必要です。そのため、まずはメインバンク(借入残高が一番多い先)に相談することをお勧めします。メインバンクから「支援は難しい」と言われてしまうと、そもそもこの制度を利用できない可能性があります。

メインバンクが大手銀行の場合は、借入残高が2番手以降の地銀、信金へ相談します。中小零細企業への支援姿勢という点では、やはり地域密着型の金融機関の方に軍配が上がります。 

相談の内容は、返済が難しいことや真水(追加の借入)ができないか、405事業を活用したい旨です。

 

・専門家から求められたものはすべて開示する気持ちで

私の経験では、再建できる経営者とそうでない経営者の差は、この「開示」に対する姿勢にあると感じています。

再建できる経営者は、すべての情報を開示した上で「どうすればいいですか?」と相談できます。一方、再建が遅れる経営者に多いのは、都合の悪い情報を隠そうとする傾向です。

隠し事が多いと専門家も本質的な改善提案ができず、形式的な計画になってしまいます

 

・計画策定後の認定支援機関との関わり方を決める

計画策定が終わると、金融機関や関係者が集まりバンクミーティングを行います。この場で計画内容の説明や金融支援のお願い、質疑応答・意見交換を行います。

このバンクミーティング終了後、各金融機関が計画内容に同意を行い、改善計画書作成の仕事は完了です。

 

その後、専門家の関わり方については大きく二つのパターンがあります。

一つは405事業で定められた法定モニタリングのみの関わり方です。これはやや形式的なもので、定期的に計画の進捗状況を確認する程度になります。

もう一つは伴走支援です。いわゆる経営顧問やプロジェクトとして、専門家がそのまま計画実行の支援をするパターンです。当然、追加の費用は必要になりますが、専門家の知見を活用しながら改善を進められます。

 

どちらを選ぶかは状況次第です。すでに改善傾向が見られる場合や、形式的な計画だけ欲しい場合、あるいは専門家との相性が良くなかった場合は、法定モニタリングだけで十分でしょう。

一方、改善の兆しが見えない、専門家の知見を活用したい、そして何より専門家との相性が良いと感じた場合は、伴走支援までお願いすることをお勧めします。特に「相性」は重要です。

 

飲食業を営む経営者は、「最初は費用の面で伴走支援を断ろうと思ったが、計画を作る過程で先生の提案に納得感があり、このまま支援してもらおうと決めた」とおっしゃっていました。実際、その後の改善は順調に進んでいます。

逆に、相性が悪いと感じた専門家に伴走支援を依頼しても、途中で関係が破綻してしまう可能性があります。私の経験では、相性の良し悪しは計画策定の過程である程度分かります。

 

伴走支援を受けるかどうかの判断は、計画策定の終盤でも構いません。むしろ、一緒に仕事をした実感を踏まえて判断できる方が、ミスマッチは少なくなるでしょう。

 

経営改善は一朝一夕にはいきません。だからこそ、専門家の支援を受けながら着実に進めていくことが大切です。405事業という制度を活用し、ぜひ本格的な経営改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。