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事業再生の相談時期 〜経営者が知っておくべき3つの警告サイン〜


 事業再生の専門家同士で話をしていると、「もう1年、遅くとも半年早く相談してくれたらよかったのに」という声をよく聞きます。私はこれまで様々な中小企業の支援を行ってきましたが、相談が早ければ早いほど、選択できる選択肢は多くなります。しかし、実際の現場では相談が遅れてしまうケースがほとんどです 

経営が厳しくなっていくパターン


経営が厳しくなってくると資金繰りに悩むことになります。最初は会社の資金で対応しますが、いよいよ難しくなるそうするとまずは金融機関を頼ることになります。

融資によって資金繰りが改善しても根本的なPL(損益計算書)改善ができていなければ、いずれ新たに借りた資金も枯渇します。そうするとまた金融機関を頼ることになりますが、借入はどんどん厳しくなります

 

そうしていよいよ金融機関から「貸せません」と言われる日が来ます。その前後から経営者の個人資産を投入するようになります。個人の貯金から始まり、車や土地等の資産売却、親族や知人から借りた資金を投入するように。しかし、そのような資金繰りはいつまでも続きません

遅かれ早かれ個人で手当できる資金が尽きてしまい、金融機関に「返済ができない」と相談に行くことになります。

相談を受けた金融機関は、「経営改善のために専門家に見てもらいましょう」とアドバイスし、私たちのような専門家に相談が入るという流れになります。

 

 

3つの警告サイン


経営改善フェーズに陥るまでの大まかな流れを説明してきましたが、ここでそこに至るまでにある大きく3つの警告サインについてお話しします。

まずはPL(損益計算書)が赤字になるタイミングです。資金繰りの悪化の多くは、ビジネスで利益を上げることができなくなったときから始まることが多いです。

 

・サイン1:経常利益+減価償却費で数百万円の赤字が2年続いた

会社の規模にもよりますが、経常利益+減価償却費で数百万円の赤字が2年続いた場合、会社の収益性に問題が生じている可能性があります。この段階であればまだ手元に資金がある会社が多く、比較的回復もスピーディーです。

 

・サイン2:運転資金を金融機関に頼まざる得なくなった

今まである程度会社で回せていた資金繰りが難しくなり、金融機関から運転資金を借りる必要性が出てきた段階です。運転資金を借りることが問題なのではなく、今までよりも借りるペースが早くなった、厳しくなったという場合が問題です。例えばこれまでは毎年仕入時期に300万円借りれば半年は難なく回っていた資金が、追加で借りなければ厳しくなったというようなケースです。

 

・サイン3:金融機関からの借入が難しくなった

 

今までは簡単に借りれたが、金融機関から借入が難しくなったタイミングが三つ目のサインです。この段階まで来ると、客観的に見て収益性や安全性に大きな問題があると言える状態です。

 


どのタイミングで専門家に相談すべきか


 早ければ早いほど良いのですが、現実的にはサイン3の段階になったらすぐに相談すべきです。理由はこの段階であれば、まだ手元に個人資産があるからです。

 改善策を講じてから成果が出るまでには時間がかかります。また、早く成果を出そうとするほど投資や費用も必要になります。そのため、改善までの時間を持ちこたえるための運転資金や投資・費用を払うための資金が必要です。

 サイン1のタイミングであれば、まだ会社に資金が残っているのでこの資金を使って対応することができます。サイン2のタイミングでも、金融機関から資金供給を受けて一時的に資金が回復しているので対応できます。サイン3のタイミングでは、文字通り経営者の身銭を切ることになりますが、ある程度の資金を使用することができます。

 

 

 現実はサイン3の段階でも何とか自力で対応しようとしてしまい、資金が枯渇してから相談するケースがほとんどです。ここまで来てしまうと対応策は限られ、改善スピードも非常にゆっくりとしたものになりがちです。早めの相談をお勧めします。