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【歴史に学ぶ第45回】自己投資について

  

 まだ社会人1年目だったころに、帰宅途中の電車で聞いた会話を今でも覚えています。

 白髪のサラリーマンと少し年下と思われる中年の二人組でした。

 

 「若い頃は時間ができたら勉強しようと思っていたが、今から考えればあの頃が一番時間があった

 

 それを聞いて、自己投資をしておかなければいけないなと感じました。

 

 カエサルは国外逃亡の中で様々な経験を積み、再び帰国します。

 そして、31歳でようやくローマ政界のキャリアをスタートします。

 

 当時からカエサルは有名人でした。

 ただし、政治家としてではなく、派手な生活ぶりと莫大な借金を抱えていることで有名でした。

 

 当時のカエサルの借金は、11万以上の兵士を1年間まるまる雇える金額でした。

 その借金の使い道は以下のようなものです。

 

 ①本の購入

 まず、カエサルは大変な読書家でした。当時の本はすべて写本でしたので恐ろしく高いものでした。その読書量は、当時のナンバーワン知識人からも認められるほどでした。

 

 ②おしゃれ

 カエサルはおしゃれにとても気を使っていました。

 カエサルは暗殺されたときにも、倒れたときに見苦しくならないように着衣トーガのすそを身体に巻きつけながら倒れたと言われています。

今でもそうですが身の回り品に凝りだすとキリがありません。

 

 ③交際費

 友人や後援者との交際費も馬鹿になりません。

 ただ、これは当時の政治家としては当たり前の使い道だったと言えます。

 

 ④女性へのプレゼント

 カエサルの女好きは有名でした。

 後年、カエサルの部下たちはカエサルの戦勝を祝う凱旋式の際に、「みんな女房を隠せ!ハゲ(そのときカエサルはハゲていました)の女たらしがやってくるぞ!」と愛のあるいじりをしています。

 こうした愛人を喜ばそうとするプレゼントが高くつきました。

 

 これらは自己投資と言えると思います。

 ①は自分の知識や見識を広め深めるため。

 ②についても行き過ぎたおしゃれはどうかと思いますが、良いものを知るということは視野を広げるうえで大事なことです。

 ③については、色々な人と交流をもち、つながりを作ることは今でも大事です。

 ④は異性でも同性でもいいのですが、誰かを喜ばせるためには、相手の観察や情報収集が不可欠です。そうした中で培われた人心掌握術もあったと思います。

 

 と、やや無理やり弁護してきましたが、さすがのカエサルもこの借金額を反省したようです。

 

 でも生活ぶりは変わらなかったようですが。 

  

   

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ローマ人の物語(8)ーユリウス・カエサル ルビコン以前(上)(新潮文庫) 塩野七生著