企業再生の仕事をする上で、心掛けていることがあります。
それは、「安易に過去の施策を批判しない」ことです。
どんな施策にもメリットとデメリットがあります。
もともと、何か問題や課題があって新しい施策を導入するわけですから、スタート時にはメリットが大きかったはずです。
しかし、時間と共に環境が変化し、デメリットがメリットを上回るようになるわけです。
ある工事業者は年々売上高が増加していました。
しかし、外注比率が高く利益が薄かったので、内製化すべく人員を増員しました。
タイミング悪く、二年後に環境が変化して売上高が激減。
人件費の負担が大きく、大きなダメージを受けました。
結果だけを見れば「増員したこと」は大失敗でしたが、その後を知っている人間が批判するのは、答えが出た後に「この問題の答えはこうだろ? 簡単だよ」とドヤ顔するようなものです。
問題は、何か施策を導入する際にリスクを考えずに事を急ぎ過ぎたことや、環境変化に対して迅速な対応ができなかったことにあるでしょう。
ローマ軍団が各地で無様な敗北を期するなか、現場叩き上げの軍人・マリウスが台頭します。
軍団の現場を良く知るマリウスは、軍制改革に乗り出します。
ローマ軍団は徴兵制で、生活に不安がある状態では士気が上がりません。
そこで、マリウスは徴兵制から志願制に変更しました。
軍団兵を義務から職業に変えたのです。
これは失業対策にもなり、生活基盤ができた軍団はマリウスの下、強いローマ軍団に戻ります。
ただし、依然として兵役が義務だった同盟都市が怒って同盟戦役という戦争が起きましたが、これをきっかけにローマ連合は「他民族総合国家」への変貌を遂げます。
一方で、この志願制は時代とともにデメリットが色濃くなっていきます。
(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。
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・ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) (新潮文庫) 塩野七生著