過去の成功体験が足を引っ張ることがあります。やり方を変えた方がいいのではないかという状況になっても変えることができません。
成功した当事者は、成功体験を変えることは自分たちの成果を否定されたように感じます。
変えた方が良いと思っていても、変えて失敗したときに「あのとき変えなければよかった」と非難されるリスクを感じます。
スペインで大戦果を挙げたスピキオは、アフリカに攻め込むことを元老院に提案します。
イタリア半島に居座っているハンニバルも、アフリカが危機となれば引き上げざるをえないという考えです。
しかし、元老院では反対派が優勢です。ハンニバルが引き上げるという保証はない。イタリアからハンニバルを追い出すことが先だと。
スピキオは応えます。
「これまで成功してきたことでも、必要があれば変えなければならない。今がそのときである。」
ローマは持久戦により優勢になっていました。
しかし、ハンニバルとの直接対決には勝てず、決定打には至っていない。
今のやり方では、ハンニバルが対決したいというときにしか直接対決ができない状態です。ハンニバルが対決したいというときは、ハンニバルが有利と感じたときです。
これでは勝つことが難しい。
そのため、スピキオはローマが有利な状況にハンニバルを引きずり出すために、アフリカ遠征という作戦を提案します。
元老院は反対派が主流でした。
しかし、反対派が優秀であったのは、自分達の体面は傷つけないようにしながらも、抜け道を用意してスピキオにチャンスを与えたことでした。
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・ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫) 塩野七生著