「彼は若いから」という理由で抜擢をためらう方がいます。経験が少ない。それも一理あります。
しかし、良くも悪くも経験が少ないので常識に凝り固まらず柔軟な発想ができる可能性もあります。
よく知ったベテランがフォローしながら、若い発想を活かしていくことが望ましいです。
ハンニバルに負けない戦い方は効果を上げていましたが、決定打には至らず6年が経過しました。
その間に優秀な将軍も戦死しており、さすがのローマも派遣する人材に限りが出てきました。
そこに名乗りを上げたのが、スピキオという青年です。
当時のスピキオは24歳。
30歳以上でなければ議員にもなれず、キャリアを積んで40歳を過ぎなければ軍団を率いることがないローマです。
一方、スピキオには周囲の同情を誘う背景がありました。
ローマはハンニバルの本拠地スペインにも軍を派遣し、補給を絶つ作戦を展開していました。
敵地スペインで補給を受けられない中、ローマ軍は奮戦。スペインの3分の1を制覇していました。
この状況を恐れたのがカルタゴ本国です。スペインに大軍を投入した結果、ローマ軍は壊滅しました。このとき戦死したのがスピキオの父と叔父です。
ルールに則れば24歳の若者を抜擢することはありえません。
しかし、他に適当な人物がいません。
元老院議員からすれば同僚の息子が敵討ちをしたいという心情も分かりますし、何よりも本人がやりたいという。
そこで、お目付け役を同行させることを条件にやらせてみることにしました。
この柔軟な判断により抜擢されたスピキオは、スペイン攻略を成功させます。
(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。
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・ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) (新潮文庫) 塩野七生著