人間、ひとりでできることには限界があります。
プレイヤーとして優秀な創業社長の会社が、ある程度の規模になると頭打ちすることがよくあります。
一人で何事も進めることができる能力があり、手間取っている従業員がいるとつい自分がやってしまう。こうした積み重ねにより、自分が動かなければ何もできない組織になっていきます。
そして社長が動ける限界に達すると、それ以上の規模になれなくなります。
ハンニバルは天才でしたが、人を育てるタイプのリーダーではありませんでした。
部下と同じ食事をとり、同じように地べたで就寝し、誰よりも仕事をこなしました。
そのため、部下たちからは非常に慕われていましたが、相談できるような相手はいませんでした。
天才ハンニバルの弱点はそこにありました。
ハンニバル軍にはハンニバルの他にこれといった将軍がいなかったのです。
ハンニバルはローマに大勝し、南イタリアの大半を手に入れました。
しかし、この地域をハンニバル一人で守らなければならなくなったのです。
一方の当時のローマにハンニバルに勝てる天才はいませんでした。
しかし、組織ローマには経験豊富な優秀な将軍がたくさんいました。
4人の優秀な将軍にそれぞれ軍団を任せてハンニバルに対峙します。
天才と戦えば被害が大きいので、直接ぶつかることは避けて守りに専念し、ハンニバル不在の敵軍を叩いていく作戦です。
こうしてローマはハンニバルに勝てなくても負けない戦いを展開します。
一方で誰かがハンニバルを引き付けている間に、他の将軍がハンニバルのいない敵の拠点を攻略していくわけです。
これにはさすがのハンニバルも次第に劣勢になっていきます。
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・ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) (新潮文庫) 塩野七生著