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【歴史に学ぶ第25回】相手の強みに非常識で勝つ

  

 素人の意見が打開策になることがよくあります。

 プロは長年の経験でこれという常識を持ちがちですが、そうでなければならないというものはほとんどありません。

 

 「業界の常識は世間の非常識」という言葉もあります。どんなに良いこだわりでも、お客様から評価されなければ意味がありません。

また、素人意見の方がお客様の感情を素直に表現することが少なくありません

 

シチリア島での戦いの終わりが見えてきたと思っていたローマ。

 

一方、シチリア島での権益を奪われると感じたカルタゴは、ここに来て本格的にローマとの戦いに取り組む決意をします。

 

カルタゴとの全面戦争にあたってローマは海軍の必要性にぶつかります。ローマは軍船を持っていませんし、同盟都市もカルタゴの軍船に匹敵する船はありません。

カルタゴとまともに渡り合うには同じクラスの軍船が必要ですが、ローマに建造のノウハウはありません

 

そこでローマはカルタゴの船を分解して、真似ることで軍船を建造しました。ライバルの製品を買ってきて研究したりするようなイメージでしょう。

 

また、船を動かすための漕ぎ手が必要なので訓練を行います。翌年の春にはローマ初の海軍としてデビューします。しかし、熟練のカルタゴ海軍とやっつけのローマ海軍では話になりません

 

 そこでローマは、自分達の不利を補うための新兵器を考えだします

ローマは不得意な海上の戦闘でいかに陸上の戦闘に持ち込むかと工夫しました。

 

この発想は、これまでのどの船にも無い兵器でした。海を得意とする国はいかに海上の戦闘で有利になるかを考えて船をつくり訓練を行います。

 

 また、その習熟がプライドとなり「わけのわからないもの」を船に設置することを許さないでしょう。 

 

ローマ海軍とカルタゴ海軍の戦闘では、船の操縦という点では素人とプロ選手のような差がありました。ローマの船につけられた不格好な物体もカルタゴ人の笑いを誘います。

 

 しかし、この後の戦況はローマの一方的な優勢で終始し大勝します。

 

  

   

(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。

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ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫) 塩野七生著