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【歴史に学ぶ第10回】疑われたときの動き方

  

 トップになると、遅かれ早かれ人々の嫉妬と疑いと中傷を浴びるようになります。

 本日の主人公は、そんな状況を見事打破した人物です。

 

ブルータスがエトルリア軍を迎え撃ったとき、もう一人の執政官がヴァレリウスでした。ブルータスの戦死に涙したローマ人は、生き残ったもう一人の執政官に疑いの目を向け始めます。

 

まず、ローマの伝統であった戦勝後の凱旋式の出来事です。

 お金持ちであったヴァレリウスは、凱旋将軍の駆る四頭立ての戦車を引く馬を、すべて白馬にしました。これが王者趣向のあらわれと見られました。

 勝利が嬉しくて奮発したのでしょうか。少しもうかった社長が成金趣味丸出しの車を買って出社するようなイメージでしょうか。

 

余談ですが、社長が良い車に乗るのは結構です。ただし、自社従業員の待遇に自信が無ければ会社には乗ってこず、こっそりと乗ることをお勧めします。堂々と良い車に乗りたければ、会社みんなで良い車に乗りましょう。

 

彼の豪華な屋敷も王の居城でもあるかのように見えました。

 加えて、ブルータスの死によって空席になった執政官の席を、ただちに埋めようとしなかったことも非難の種となりました。

 ヴァレリウスは執政官ではなく王位を狙っていると噂されたのです。

 

 これに気づいたヴァレリウスはすぐに対応します。

 一晩のうちに自分の屋敷を壊させてしまうと、値段も安い土地に質素な家を建て引越してしまいます。

 さらには家の出入り口は開け放たれたままにしておき、誰でも自由に出入りし、彼の暮らしぶりがじかに見ることができるようになりました。

 妬みを受けやすいものを無くし、いつでも様子を見てくださいと透明性を高めたわけです。

 

 加えて民衆に評判のよさそうな法律を次々と制定します。

 こうした人気取りが功を奏し、彼は公共の利益を重んずる者という意味の「プブリコラ」とあだ名されるようになります。

 単なる人気取りだけではなく、事前に自分の生活を律したことが大きいと思います。

 

  

(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。

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ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず() (新潮文庫) 塩野七生著