
制度が変わるとき、不利益を受ける人達がいます。そうした不利益をいかに発生させないかということが重要です。
しかし制度の意味を考えるとどうしても、配慮しきれないこともあります。みんなが都合よく利益だけを得られることはありません。
尊大な王を追放した後、ローマはいかなる人物であろうと王位に就くことは許さない国になりました。専横を防ぐため、最高責任者である執政官は二人体制とし、任期は1年(再選あり)としました。
王政から共和制に移行することで、ローマの有力家門の若者たちが不満を持ちました。
昔は社長に気に入られたらすぐ抜擢されたのに、急に年功序列の色が強くなり先輩たちがいなくなるまでポストに空きが出ないという状況です。若者の不満は大きくなり、王政復古の陰謀を企てます。
陰謀には執政官ブルータスの二人の息子も含まれていました。企ては明らかになり若者たちは逮捕されます。市民たちはブルータスの胸中を思って追放刑を提案しますが、ブルータスは息子二人を死刑にしました。
追放された王・タルクィニウスは自らの復権を諦めておらず、若者の反抗では済まされない状況だったからです。
身内であろうと重大なミスには毅然として対応する姿は大事です。なあなあにしてしまえば、不公平感を生むだけでなく、事態を甘く見る雰囲気が出てしまいます。
若者たちの企てが失敗したタルクィニウスは、エトルリアという国に軍を借りてローマに迫ります。第一回目の会戦で、ローマ軍はエトルリア軍を退けたもののブルータスは戦死します。
さらに、ローマとエトルリアの不穏な情勢を見て、ローマと同盟していた周辺部族までが動き出します。再度襲撃したエトルリア軍はローマを完全包囲する。
これにローマは一致団結して耐え忍ぶことで、危機を脱しました。
(参考図書) 持ち運びしやすい文庫版がお勧めです。
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・ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫) 塩野七生著