株式会社R建設さま

回ったら何かが出てくる―長年の得意先を見直して成功した事例―

会社の状況

業種:建築・リフォーム業

年商:5千万円

従業員数:3名

設立:昭和53年 


同社は昭和53年に創業した、夫婦とパート1名の工務店である。創業当初は市営住宅の建築・修繕を中心に請け負っていたが、現経営者が事業を承継後、民間工事の取引先を開拓。現在では、ほぼ100%が民間工事である。民間工事の拡大により利益率が上昇。多額の利益を得たが、投資詐欺に合い資金繰りが不安定になったことから歯車が狂い始める。7年前には、得意先の倒産により大型案件の代金回収ができなくなり、資金繰りが更に悪化し今日に至る。

事例の問題点


(1)貧すれば鈍する

悪化した資金繰りをカバーすべく、ここ5年はどのような相手先の仕事でも受注するようになった。結果として、支払が遅い先や代金の一部が支払われない先、追加工事の代金を踏み倒す先等、悪質な得意先が売上高に占める割合が高まった。経営者も「正常な精神状態ではまず付きあわない先」と自覚しているが、資金の流れを止めないためには致し方なかった。その為、資金収支が合わない工事の穴埋めをするために、更に資金収支が合わない工事を受注せざるを得ないという悪循環に陥ってしまった。

 

(2)良い得意先を放置していた

経営者の人柄や仕事に対する姿勢を高く評価している得意先も少なくはなかった。しかし、忙しい中ですぐにお金につながらない得意先へのアプローチができなくなり、良い得意先との関係が疎遠になっていた。

 

(3)工事の収支管理を行っていなかった

工事単位で売上高、外注費や材料費等の費用を管理していたが、それぞれが個別に管理されており、案件自体で収支がいくらかは管理されていなかった。そのため、売上高上位3件の顧客先で売上高全体の6割を占めるにも関わらず、3社の粗利益率は11.4%であった。これは全社平均24.3%を大きく下回る利益率である。大きな売上高を求めていたが、利益が付いて来ておらず、忙しいが儲からないという流れを加速させていた。

対策


(1)収支管理の実施

まずは現状残っている資料から、工事ごと、顧客ごとに収支管理を行った。その結果は前述の通りである。経営者は薄々気づいてはいたが実態を目の当たりにすることで、受注の取り方について認識を改めざるを得なかった。

 

(2)良い得意先を訪問する

収支管理を行っていく中で、やはり利益率が良いお客様は長年の付き合いのある馴染みの得意先であった。彼らは、利益率が良く、支払が早く、自分だけでなく別のお客様を紹介してくれるという有難いお客様であった。しかも、当社がここ数年積極的なアプローチを行っていないのにも関わらず、何かあったら声を掛けてくれるのである。まずは経営者に、いつでもふらっと訪問して雑談できる良い得意先をリストアップしていただいた。後は、すき間の時間を使ってリストにある得意先を訪問するだけである。まずは試しに4件行った。長年、「ちょっと近くに寄ったから」などとしてこなかったため、少しバツが悪かったが、得意先は「おお~久しぶり!」とあたたかく出迎えてくれた。結果は4件訪問で3件の案件受注である。雑談の中で、「そういえばあそこがちょっとおかしいから見てくれないか」と話が出た。「親戚の○○が屋根の修繕を考えているから、紹介するよ」と声掛けをしてくれた。 

 

(3)得意先にやっていることを知ってもらう

当社は、経営者の技術力に加え、長年付き合いのある職人の力により内装、外装、配管、外構等多様な工事に対応できる。しかし、得意先の案件状況を見ていると、偏りがあることが分かった。内装の得意先は内装案件だけ、配管の得意先は配管案件だけという調子である。そこで、得意先訪問の際にはその得意先で過去に受注したことがない工事の話を雑談の中に入れるようにした。配管の得意先に対して「この間、こういう配管の工事がありまして・・・」という類である。いくつかの得意先から、「御社はそんな工事もしてたんですか。また修繕が近い案件があるので相談させて下さい。」と言われ、案件につながったケースがあった。「10年以上付き合いがあるのに、意外とうちの事を知らないものですね」と経営者は語る。

効果


「回ったら何かが出てくる」と経営者はおっしゃる。すき間時間に、得意先を訪問して10分、15分雑談をするだけである。これだけで案件の掘り起こしや新しい得意先の紹介が舞い込んできている。もちろん、これまで愚直に仕事に取組み、関係性を構築してきたことが土台として大きい。元請先だけでなく、工事先の住人に対しても丁寧な挨拶やコミュニケーションを欠かさない。あるマンションの修繕工事を請け負った際のことである。日々挨拶や撤収の際の掃除、住民の方とのコミュニケーションを欠かさず行った。住民の方から大変好評で、評判を聞きつけた元請先の担当者から「別のマンションで今の業者はクレームが多いから、そちらも担当してもらえないか」と案件を頂いた。良い得意先に関わる時間が増えたため、悪質な得意先に関わる時間が減っていった。これまで散々トラブルの対応に追われていたが、それもほとんど無くなってしまった。今期が開始してから半年であるが既に、前年水準の売上高を計上。利益率も大幅に改善している。